加々美 太一
1981年生まれ。東京都町田市出身。幼少期からサッカーを始める。中学校ではFC町田ジュニアユースに所属。高校は神奈川県の桐光学園高等学校に進学。高校卒業後、関東学院大学へ進学しサッカー部に所属していた時に「東京ヴェルディ1969」のトライアウトに合格する。大学に通いながらプロサッカー選手として1年間プレー。その後、シンガポールのバスティアカルサFCに1年間レンタル移籍。帰国後、ザスパ草津で1年間プレーした後、ヴァンフォーレ甲府に練習生として参加したが選手契約をつかむことができず選手を引退。引退後は会社員として4年間勤務し、26歳の時にアパレル関連会社を設立した。その後、2021年に社団法人FBSL(フットブレインサイエンスラボ)を立ち上げ、障害を持つ子供たちの支援を積極的に行っている。
これまでのキャリア
●1997年 FC町田U-15から桐光学園高等学校へ入学
●2001年 東京ヴェルディ1969入団
●2002年 シンガポールリーグ バスティアカルサFC入団
●2003年 ザスパ草津入団
●2007年 株式会社デポイスジャパンを設立
●2021年 社団法人FBSL設立
■好きなサッカーでプロを目指す
小学校高学年の時にJリーグが始まり、サッカー人気が高まる中自身も地元のクラブチームでサッカーを始める。中学校の時はFC町田セルビアの前身であるFC町田ジュニアユースでプレー。高校は数多くのJリーガーを輩出している神奈川県の桐光学園高等学校に進学し、チームの中心選手として活躍した。
高校卒業後は関東学院大学へ進学し、サッカー部に所属していた時に東京ヴェルディ1969のトライアウトを受け見事合格。そこからプロの道へと進む決断をする。得意のドリブルを武器にチャンスメーカーとしてチームに貢献していたが、2年目に当時のJリーグチェアマンが注目していたシンガポールリーグへ期限付きで移籍することになった。1年間の在籍後、翌年ザスパ草津に入団する。
ザスパ草津では中々活躍の場を見出すことができず、ヴァンフォーレ甲府への移籍を目指し練習生としてチーム練習に参加したが、選手契約をつかむことができず選手を引退することを決断した。
■色々悩んだセカンドキャリア
引退後、アパレル関連の企業に就職し4年間会社経営面も学び、26歳の時にアパレル関連の会社を設立。
「幼少期からサッカーをやってきて、サッカースクールやサッカーに関わることはできると思いましたが、色々悩みながら新たな領域にチャレンジしてみようと思いました」
若くして引退する選手が多い中、日本のサッカー界は選手のセカンドキャリアを支援する部分が十分ではないと加々美さんは感じていた。
ポルトガル語で「後」という意味の「デポイス」を会社名とし、サッカー選手のセカンドキャリアを支援する事業を行い、飲食店を6店舗、時計輸入販売の代理店事業もスタートさせ、自社でも選手のセカンドキャリアとして受け入れる体制を整えた。
■アスリートならではの視点を活かして
元スポーツアスリートの経験から身体を動かす時は、靴がとても重要だと思っていた。特にインソールの重要性を選手時代から痛感していたこともあり、2021年には社団法人FBSL(フットブレインサイエンスラボ)を設立した。
インソールを販売するのではなく、インソールを作る技術を提供する会社。怪我を予防したり、リハビリを行う専門家やスポーツトレーナーに向けて、身体の特徴や症状に合わせたインソールを作るスクールを運営している。受講者を通してインソールの重要性や効果を伝え続けている。
「腰痛や肩こり、歩行障害、外反母趾、スポーツ選手の怪我の予防など、様々なシーンで効果が出ていることを実感しています。スクール卒業生からも、腰痛や怪我などの予防ができるようになった、姿勢改善やパフォーマンス向上につながったなどの声も上がっています。」
■夢は八王子でクローバーシティと言う特別特区を作る事
新たな活動として、障害を持つ子どもたちの周辺で何か役に立てることはないかと考え、先ずはその保護者から沢山の話を聞くことから始めた。
「障害を持つ子どもたちは中々遊ぶ場所がなく、健常者側も障害の知識を持っていないので接する難しさを感じていること。結果、子どもたちは引きこもりとなり、スポーツや身体を使う楽しさを知らずに過ごしているということがわかりました。」
また、ヨーロッパでは障害を持つ子どもたちが楽しめる場所や環境が普及しているのに対し、日本にはそのような場所や環境が整っていないこともわかった。
そこで加々美さんは、幸福を象徴するシンボルにちなみ、2021年に自社の中で『クローバープロジェクト』を立ち上げる。子どもたちが好きなものを見つけ、身体を動かせる環境を作るプロジェクト。毎年イベントを開催しながら、2023年夏には保護者たちが中心となり、子どもたちが好きなことや好きなスポーツを発見し、保護者同士の新たなコミュニティを形成する『クローバーフェスティバル』を山梨県の富士北麓公園体育館で開催した。
100名の子どもたちを招待し、柔道オリンピックメダリストの杉本美香さん、バレーボール元日本代表の大友愛さん、サッカー元日本代表の内田篤人さんをゲストに招いて『できる!を応援 大好き!を探そう』というテーマでスポーツを楽しんで自分で好きなものを見つけてもらうイベント。
「子どもたちが楽しく遊べる環境を提供し、その体験から自分の得意分野を見つけてもらい、大人になったときに自分の個性を生かして社会で活躍できるよう、その成長の後押しができればという想いと、保護者の方々にも家族同士の新たなコミュニティが作れる機会になればという想いで開催しました。」
この『クローバーフェスティバル』は参加者からも高い評価を受け、2024年3月にも開催。子どもたちの参加人数も150名まで増えた。
「この活動の将来の夢は、八王子でクローバーシティと言う特別特区を作る事です。そこでは、障害を持つ子どもたちが自ら好きな事を見つけて、好きなものを職業として選べて、そこにしっかり対価が生まれる環境。子どもたちが様々な体験をして、身体と脳を刺激する環境を作っていきたい」と加々美さんは言う。子どもたちもその家族も、楽しく好きなことが見つけられる『クローバーシティ』の誕生が今から楽しみだ。