父の夢、恩人の教えが人生のスイッチを押した—元ロッテオリオンズ渡辺氏が語るアスリートのセカンドキャリアー

◆経歴
日本大学第二高校 1982~1984
日本大学 1985~1988
ロッテオリオンズ(千葉ロッテマリーンズ) 1989~1996
千葉ロッテマリーンズ球団職員 1997~2000
株式会社SPORTS BIZ 2001~2004
株式会社 RAM Sports 代表取締役
株式会社ベイス・オブ・スポーツ 代表
株式会社Spotlight 代表取締役
◆キャリアのきっかけ:プロ入りの裏にあった父の夢
高校・大学時代は野球への熱意が薄かったという渡辺さんですが、プロ入りは人生の大きな転機となりました。大学野球引退後、ロッテからのドラフト指名を受けた際、渡辺さんは当初、冗談だと思っていたと言います。「プロ入りなんて、俺はいかないよって言ったら、母親から、お父さんはたくさんいる兄弟のために中卒で働いて、野球選手になる夢をあきらめたんだって、初めて聞かされたんです。きっとその時が、本気でやらなくちゃいけないなとスイッチが入った瞬間だったかもしれません」
と渡辺さんは振り返ります。
◆苦労したことと乗り越え方:恩師との運命的な出会い
プロ野球の世界で、渡辺さんは多くの苦労を経験します。特に、打撃向上を目指してスイッチヒッター転向を命じられた際の練習は「野球人生で一番つらかった」と振り返ります。
そんな中で、渡辺さんの野球に対する考え方を根本から変えた運命の出会いがありました。当時二軍にいた牛島和彦さん(元プロ野球選手)です。キャンプ中、牛島さんは毎晩のように渡辺さんを誘い、朝までお酒を飲みながら野球の話をしてくれたと言います。
「何を教わるわけでもなく、牛島さんの経験談や、プロ野球界でやっていく方法を聞いたり、いろんな人を紹介してもらったり、その時の経験が野球に対する考え方を変えました。自分と野球は切り離すことはできない、一生野球人としてやっていこうという気持ちになりましたね」
恩人・牛島さんとの交流を通じ、「一生野球人」としての覚悟を持てたことが、どんな苦難も乗り越える精神的な支えとなりました。
◆フロント入りへの転機とセカンドキャリアへの展望
プロ選手として 8 年間を過ごした後、渡辺さんは球団から編成部(トレードやスカウト担当部署)への打診を受けます。現役続行への未練がある中で、再び牛島さんに相談したところ、「今からほかのチームに行ってスポットライトを浴びるような活躍をする自信はあるのか」と問われます。
牛島さんからは、フロントに呼ばれることの貴重さを説かれ、「とにかく 3 年間、野球界の人脈を作って力をつけろ」「そして俺を監督として呼べ」と背中を押されました。この教えを胸に、フロント入りを決意。2軍のスコア報告、外国人選手との交渉、スカウト活動など、多岐にわたる業務で人脈と経験を培いました。
「その時の人脈や経験が私のセカンドキャリアに繋がっているんです。海外の選手と交渉した時のエージェントという仕事は、これからの日本にも必要だな、そういう仕事をやってみたいなと」
退団後、アスリートのマネジメント会社で経験を積み、独立。会社名を「スポットライト」としたのは、牛島さんの「スポットライトを浴びられるのか」という言葉が忘れられなかったからです。
◆「セカンドキャリア」に対する思いと現在のやりがい
渡辺さんは、引退後の人生についてこう語ります。
「セカンドキャリアというと、いつまでも現役にしがみ付いていないでスパッと次の人生を探しなさいっていう考え方に違和感がありました。親がいっぱいお金をかけてやらせてくれた大好きな野球を忘れて、なんで次のことを考えなきゃいけないんだろうと。野球と全く関係ないことをやるより、やってきたことを活かせる、それは人脈だったり、人との繋がりだったり。それって仕事に切り替えるだけなんですよね」
マネジメントの仕事で渡辺さんが大切にしているのは「人脈と信頼関係」です。
「好きなことだけをやっていても、信頼できる人間がそばにいないといけないんです。スポーツ界では、大変な時に助けてくれる、現役が終わってポツンってなった時に、離れずに一緒にいてくれる。そんな関係性が作れるのか」
信頼できるパートナーがいれば、競技に専念でき、たとえ現役を終えても、これまでの経験を活かせる次の道(指導者、マネジメント等)を一緒に考え、支援できると言います

◆現役選手へのメッセージ:すべてを活かして生涯野球人たれ
「人それぞれ競技人生をおくってきたわけですから、やることが変わっても取り組む姿勢は変わらないと思います。アスリートはメンタルが強いですから、自分を鍛えることができるはずです。最後までやりきって、それを繰り返していればいつか頼られる側にもなります。そんな人を応援し、支援する。そういう仕事をずっと続けていきたいなって思っています」
渡辺さんは、自身の経験と人脈を活かし、現役アスリートや未来の球児たちをサポートする活動こそが、まさに「生涯野球人」としてのやりがいであると語ります。
■渡辺英昭(わたなべ ひであき)
現役時代はロッテオリオンズに在籍しプレー。戦力外通告を受けた後は球団の編成部でスカウティングなどを担当。退団後はスポーツマネジメントの会社でアスリートたちのサポートを行い、のちに独立。現在は株式会社 Spotlight の代表取締役を務め、2016 年には、高校入学までの半年間、中学三年生の球児を指導する「関東中学硬式野球育成会」を立ち上げる。
また、2021 年からは日本大学野球部のコーチも務め、日々精力的に活動している渡辺さん。日焼けした真っ黒な顔からあふれる笑顔が印象的だ。しかし学生時代は、真剣に野球には向き合っていなかったという。
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