ボクシングもパン作りもストイックに、真摯に

★これまでのキャリア
●1972年 埼玉県に生まれる
●1991年 ヨネクラボクシングジムに入門
●1992年 トーナメントを勝ち抜き東日本スーパーフライ級新人王
●1996年 現役を引退
●2008年 10年超の修行の末、江戸川区葛西に『boulangerie JOE (ブーランジェリー・ジョー)』を開店
●現在 変わらず人気店として繁盛を続けている
★『あしたのジョー』に憧れた少年が、リングを目指した日
葛西駅から南に歩いて約20分、バスを使えば10分ほどの場所に佇む『boulangerie JOE (ブーランジェリー・ジョー)』。開店から18年を迎えた今も、変わらず街の人々に愛され続けている人気店だ。
さほど広くはない店舗だが、客足が途切れることはない。目の前の窯からは焼きたてのパンが次々と取り出され、すぐに店頭へと並べられていく。一口頬張れば、小麦の豊かな風味が口いっぱいに広がる。
そんなパンを誠心誠意作り続けているのが、店主の間々田雄一さん。パンはすべて手づくりにこだわり、定休日の月曜日から水曜日までは仕込みに専念するストイックな日々を過ごしている。そんな間々田さんは、実は元プロボクサーという異色の経歴の持ち主だ。
幼い頃に再放送で観た『あしたのジョー』をきっかけに興味を持ったボクシング。店名の“ジョー”もここに由来する。
さらに、ジャッキー・チェンやブルース・リーといったアクションスターにも憧れていた。
進学先の埼玉県立大宮高校では空手部に所属。埼玉指折りの進学校であるが、目的はただ一つ、空手に打ち込むことだった。
「ここなら親も先生も納得してくれるかな、と思っていました。なので当時は、空手しかしたくありませんでした」
そう語る通り、一心不乱に空手に打ち込む日々を送った。
高校卒業を目前に進路を考える頃、周りは当然大学に進む者ばかりだったが、テレビでたまたま見た鬼塚勝也(元WBA世界スーパーフライ級王者)に衝撃を受ける。
「強いしかっこいいし、リアルな“ジョー”だ」と、自らもプロボクサーを目指す決意が固まった。
空手では、2年生の時に県3位、3年生の時には2位とインターハイや国体にはあと一歩届かなかったが、関東大会には進み、県の強化指定選手になるほどの実力をつけていた。

★駆け上がった先にあった、もう一つの壁
いくつかのジムを見学した中で、決意した間々田さんが門を叩いたのはヨネクラボクシングジム。
「大橋秀行さん(元世界王者/現在は井上尚弥らが所属する大橋ボクシングジム会長)をはじめ、強い選手がたくさんいて活気もあり、ココだ!と思って決めました」
空手の癖が抜けず、ガードが下がってしまうなどの苦労の連続。また、当時隆盛を誇り多くの練習生がいたジムの中、「まずは目をかけてもらうところからでした」と振り返るように、必死に地道な練習を積み重ねていった。その結果、スーパーフライ級の東日本新人王にまで上り詰める。
だが、そこから先が遠かった。
「新人王を獲って合宿にも連れて行ってもらえるようになりました。でも、空手でもそうだったのですが、上位まで行ってもそこから勝ちきれず、全日本新人王にはなれませんでした。B級トーナメントや、A級に昇格してからのトーナメントでも負けてしまいました」
日本ランキング上位に入ったこともあったが、当時の王者をはじめ、上位選手が同門に揃っていたため、なかなかタイトルマッチの機会には恵まれなかった。そんな中でフィリピン人選手に敗れ、再起戦も黒星。24歳でグローブを置く決断を下した。
★「好きなことなら本気で頑張れる」という想いがパン職人への道を切り開いた
引退後、これから何をしようかと考えた時、ふと幼い頃の記憶が蘇った。
「子どもの頃、近所のパン屋さんが夕方になると焼きたてのパンを届けてくれるサービスがあったんです。それが本当に美味しくて、チャイムが鳴った瞬間に“美味しいパン屋さんが来た!”と玄関へ走って、兄弟で奪い合って食べていました」
その記憶とともに、「好きなことなら本気で頑張れる」という思いが芽生え、パン職人としての修行を始めることにした。
修行場に選んだのは、高級ホテルや地域で名の知れた有名なパン屋。
だが、いざ足を踏み入れてみると、現実は想像とはまったく別物の世界だった。
「のんびりした仕事かと思っていたら、実際は秒単位で動いて焼くという仕事だったんです。仕事の内容で辞めたいと思ったことはなかったのですが、ホテルでは朝から晩までずっと地下で働く生活だったのが辛かったですね」
それでも自分の店を持つという夢を胸に、約5年でホテルを離れ、今度は地域を代表する人気店へと修行の場を移した。
「ホテルのパンは種類が少なく、しかも伝統的な製法であんパンすら作ったこともなかったので、また違う世界でした」と、ここでも様々な学びを得たと言う。
★想いを形にした開店、そして進化し続ける店へ
そして2008年、間々田さんは念願の独立を果たし、『boulangerie JOE (ブーランジェリー・ジョー)』を開店する。
「18年前の葛西にはオシャレなパン屋はなかったので、外観や内装はそういうものを目指しました。一方で、下町には老若男女いらっしゃるので、敷居の高くないアットホームな雰囲気も目指しました」
開店から年月を重ねた今も、初心は忘れない。人気店であり続ける理由は、パンとお客さんへの真っ直ぐな愛情にある。
「オープンの時からずっと思ってやっているのは、とにかく正直に、一生懸命美味しいパンをお客さんに届けようという気持ちで作る。お客さんに応援してもらえる店にしなければいけないということです」
「楽しくないと絶対に続かない。作ったことのないパンを作れると嬉しいですよね。マンネリにならないことはお客さんにとっても良いこと。定番のものでも少しずつ改良しているものもあります」
誠実さと挑戦。その積み重ねが、18年続く人気店を支えている。
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★現役アスリートへのメッセージ「情熱は競技の先にも続いていく」
現役アスリートへのメッセージをお願いすると、間々田さんは競技人生と今の仕事を重ねながら、やりがいを持つことの大切さを語ってくれた。
「好きなことなら頑張れる人間は多いと思います。僕の場合は、ボクシングの現役時代と同じくらいの情熱を持ち、今はパンを作ることに打ち込むことができています」
多忙な日々ではあるが、「ボクシングをやっていてよかったのは、体力が人の何倍もあって集中力も高いことですね。だからこそ、今もストイックに打ち込めます」と過去の経験も踏まえ、明るく笑う。
そして何よりの原動力は、お客さんの声だという。
「美味しかったという反応をいただけることは、現役時代の歓声をいただくことと同じ喜びがあります」
リングに注いだ情熱は、今も形を変えて燃え続けている。その炎が、今日も一つひとつのパンに込められている。
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