プロ野球選手から「プロ野球を伝える側へ」

★これまでのキャリア
●1991年 埼玉県加須市に生まれる
●2012年 上武大学で才能が開花しドラフト4位でロッテに入団
●2013年 史上2人目の新人でのプロ初打席初本塁打を放つ
●2021年 シーズン途中で中日にトレード移籍
●2024年 現役引退
●現在 報知新聞社(スポーツ報知)巨人担当記者
★グラブとバットからペンに持ち替えて
球場で練習を見つめる一人の記者。かつて12年間、プロ野球の世界でプレーした加藤翔平さんは、いまペンを手にグラウンドに立っている。
ロッテ、中日で外野手としてプレーし平均勤続年数を大きく上回る12年のキャリアを経て、2025年からスポーツ報知の記者として新たな一歩を踏み出した。
「待っている時間、長いなって最初は思いました」
現役時代とは正反対の立場。だが、その“待つ時間”の意味を加藤さんはすぐに理解する。
「準備がないと、いい話は聞けない。野球と同じで、相手の情報をどれだけ持っているかが大事なんです」
2年目の今年は自ら希望し、巨人のファーム担当に。1軍の結果だけでなく、選手たちの“プロセス”を伝えたいという思いがある。
「1軍で打った、打てなかっただけじゃなくて、ファームでどんな取り組みをしてきたのか。その過程を伝えることで、選手の価値ももっと伝わると思うんです」
★「才能はある」その一言が人生を変えた
高校時代、プロはまったく意識していなかった。中学までは無名の存在でスポーツ推薦の話もなく、進学校である埼玉県立春日部東高校へ進学した。
だがそこで力をつけて、進学した上武大学で転機が訪れる。「正直に言えば、絶対に戻りたくない4年間」と語るほど厳しい鍛錬を積んだ時期だったが、ここで才能を開花させていった。
左の強打者として社会人野球で活躍した谷口英規監督に下級生時代から起用してもらい、
大学3年になる直前からコーチに就任した平原美亜さんに見出され、マンツーマンでの練習に励んだ。
「お前は能力があるのに活かせていない。練習のやり方を考えろ。プロになれる能力があるよ。ここからの頑張り次第だ」
こうした言葉に奮い立ち、自主練習は夜遅くまで続けた。その結果、ロッテにドラフト指名を受けて、数年前からは考えられない夢舞台に立った。
★鮮烈なデビューの裏で
プロデビューは鮮烈だった。ルーキーイヤーの初打席で初本塁打。新人選手としては史上2人目の快挙だった。だが、厳しい世界だ。そこからは「どうやったらこの世界で生き残れるか。それを12年間考え続けました」という日々だった。
「本当にもう毎日毎日、結果がすべての世界ですし。やっぱりいくらバットを振ったり考えたりしても、結果に直結する世界ではないので、もう本当に 1 日 1 日がプレッシャーとの戦いでした」
ロッテ時代の後半は、二軍で結果を出しても出場機会に恵まれず、野球を嫌いになりかけた時期もあった。環境を変えたいと思い、自らトレードを志願して中日へトレード移籍。そこで再び野球の楽しさを思い出した。
「最後は、野球やっていてよかったなと思って終われました。それが本当に大きかったです」
走力の衰えを感じた瞬間、自ら引退を決意した。

★野球を伝える側として歩み出す
引退後、球団に残る道もあった。それでも加藤さんは、あえて異なる世界に挑戦した。
中学時代、主力ではなかったからこそ抱いていた「スポーツメディアに関わりたい」という原点に立ち返った。「好きなことをしないと続かないよ」という妻の言葉も背中を押した。
元選手という立場は強みでもあり、難しさでもある。
「知ったかぶりは絶対にしたくない。選手一人ひとりに思いがある。そこを大事にしたい」
信頼関係が築けたとき、選手がふと本音をこぼす瞬間がある。その瞬間にやりがいを感じるという。また、スタンドの記者席から試合を眺める中で「こんな応援の中でプレーしていたんだなと感じます。プロ野球は本当に夢のある世界です」と、あらためて感謝の気持ちが湧いたという。
いまは巨人担当として現場に立つ。「この選手のこういう記事を書きたい、と自分から提案できる記者になりたい。いろんな野球を見て、いろんな物語を届けたいです」と、大きなやりがいを持って仕事に励んでいる。
★現役アスリートへのメッセージ「やりがいを見つけることが続ける力になる」
現役選手に対してメッセージを求めると、「野球だけで生きられる人は一握り。でも、野球に本気で向き合った経験は必ず次に生きます」と力強く語る。
もちろん、この世界も決して簡単ではない。覚えることは多く、思うようにいかない日もある。それでも「自分なりのやりがいを見つけることが大事。僕も最初はきついなと思うこともありました。でも“この記事を書けてよかった”と思える瞬間が増えて、仕事が楽しくなりました」と話す。そして、もう一度人生をやり直しても野球を選ぶと、即答した。
「野球を嫌いにならずに終われた。それが今につながっています」
グラウンドに立つ立場は変わった加藤さんだが、野球への情熱は変わらない。

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